ファンタジーな食卓を考える vol.1
先日予約していた本が届いた。
それがこちら。
この本は、D&DというファンタジーRPGの原点の料理に焦点をあてた本だ。派生小説などで登場したメニューなどが、実際に作れるレシピにアレンジされ、写真とあわせてファンタジーな食卓を楽しませてくれる。
そんな本をよんでいて、キャンプ料理やイベント料理として、こんなファンタジーな料理がたのしめないか、と思った。そこで料理はともかくとして、雰囲気だけでも楽しむなのに必要なのは、何か?と考えると、その答えは「食器」だ。
ファンタジーの食卓はどんなだったのか?
まずは現実からたどっていこう
ファンタジーの食卓といっても、様々。現代の食卓の印象がフィードバックされた要素も当然ある。というわけで、まずはフィクションではなく、ファンタジーの舞台とされてることが多い、中世や近代のヨーロッパ食卓がどうだったのか、まずはGoogle先生に教えてもらった。
そこで参考になったサイトが下記のとおり。
本来であれば、これらのサイトから、さらに原典を読んだり広げたりするところだが、ひとまずは得られた知識を整理したい。
東アジアとヨーロッパにおける食卓文化の違い
当然のことだが、日本や中国、韓国といった東アジアとヨーロッパでは食文化が大きく違う。現代でも違うのだから、中世や近世ではなおのことだ。そこで日本人の常識とおもっていたことで大きく違うことをしったので、まずはそこを整理したい。
まな板は存在しない
日本の台所では当たり前のまな板。しかし、これは東アジア文化だったそうだ。ヨーロッパに限らず、料理をするときにはまな板を使わずに、直接手の上や鍋の上で食材の皮をむいたり、切り分けたりする。空中で行えない作業は、まな板ではなく調理台で直接作業をすることもあるそうだ。まあ、現代ではカットボードとしてまな板文化がはいっているようだが。
料理を小さくカットしない
東アジアは箸文化だ。だから、箸で取りやすいように小さく調理した状態で食卓に並ぶ。刺身を冊のままで皿には盛らないし、鍋に肉をまるごと入れたりもしない。かたまり肉をそのままテーブルに出すことも、少ないだろう。
一方でヨーロッパでは、肉は塊のまま食卓にだし、そこで取り分けるスタイルになる。小さいところでは、ステーキみたいな料理もナイフとフォークで自分で切る。そう考えるとサイコロステーキというのは、東アジアらしい料理なのだろう。
皿の上でカット
上記にもつながるが、皿の上で刃物をつかう文化がある、ということだ。日本では包丁を皿の上で使う、というのは好まれない。皿に盛ってから刺身を切り分けたりしないし、野菜を切ったりもしない。
一方でヨーロッパでは、皿の上で肉を切り分けるのは普通のこと。すなわち、食卓で刃物をふるうのは当たり前のことだ。
昔のヨーロッパ食器文化
では本題の中世ヨーロッパの食器文化についてだ。
フォークの歴史はスプーンやナイフとは違う
ヨーロッパの食器文化において、大事なのはナイフだ。というよりも、ナイフは食器である前に、個人の生活ツールとして必需品なのだ。だから、自分専用のナイフを持ち歩き、それで獲物を裁き、調理をし、食事をする。そして、時には身を守る武器にもなるのだ。これらを全て行うのが自分専用のナイフであり、昔は調理用の包丁や食事用のナイフと使い分けされなかった。
スプーンはもちろん食事が主な用途だ。しかし、鍋から自分の器に取り分けるために使われるツールとなった。自分の器に移せば、あとはすすればよかった。
一方でフォークは、なかなか食器としての市民権を得られなかった。キリスト教文化になったことで、フォークは悪魔の武器であり、また熊手の親戚のような扱いもうけ、野蛮な道具として嫌う人も多かったからだ。
何より食事は、宗教的背景もあり手づかみで行う文化が強かった。それが上品では無いと言うことで、上流階級で徐々に食事用の道具を使うようになった。だからナイフもスプーンもフォークも、貴重品だ。そのため、自分専用のナイフやスプーンを持ち歩いたのだ。今の日本でいう、マイ箸みたいなものだ。
ナイフやスプーンは持ち歩かなければ使えない
貴重品だからこそ、盗難の恐れがある。そのため酒場や晩餐会でも、ナイフやスプーンが提供されなかった。だから、自分でナイフやスプーンを持ち込むか、さもなければ持ち込んだ人に取り分けてもらう必要があったのだ。
外食ではナイフもスプーンも提供されない、というのは、現在だとなかなか想像しにくい。皿やコップと同等に、食事を提供されれば必須のツールとして出てくるように思ってしまう。その考えは、改めなければいけないだろう。
皿も存在しない
食器と言えば、主役は器のほうだ。しかし、ここでも今の当たり前とは違う。金属や陶器の食器も存在したが高価なものであり、硬いパンや木の板が食器としてつかわれたのだ。それがトレンチャーといわれる食器だ。
トレンチャーが硬いパンの場合、料理がのり汁を吸えば食べれるようにはなるが、それは貧しい者に施されたりし、食事のパンとして食べるものとは違った。そしてパンから木、そして金属へと時代とともに変わっていった。
金属の調理器具も貴重品
当然ながら、調理器具も金属は貴重品だ。といっても、古代メソポタミアから銅製のフライパンが見つかっており、青銅の鍋や釜も青銅器文明時代にあったことがわかっている。火を使わずに調理に利用するボウルは、陶器や金属だ。
今回は調べていないが、言語によって細分化されていたり、いなかったりするので、そのあたりも料理文化を辿るポイントになるだろう。今回は大雑把に思いついたもので考えておく。
ナイフと包丁
食事に関わる刃物である、ナイフと包丁。ここに東アジアの箸文化との違いがある。箸文化の東アジアは、食卓に刃物がない。よって刃物である包丁は、調理に特化した道具となった。一方でヨーロッパにおけるナイフは、個人の日常道具であり、料理にも食事にも、それ以外にも使う。各自がそうだったのだから、調理専用の包丁という文化とは、生い立ちが異なる。
現在にも、その文化の違いは残っている。調理用の刃物としての包丁というよりも、各用途に特化したナイフとして包丁がある考えるのがヨーロッパの考え方のようだ。だから、包丁だけれどナイフだから、調理以外のナイフとしても代用されることもある。
そんな、東アジアとヨーロッパでの包丁の生い立ちの違いは、現代でも調理に使うためにナイフとは別に包丁が必要と考えてしまう私としては、新しい視点だった。
中世ヨーロッパからファンタジー食器を考える
求めるは冒険者の食卓
ざっと中世の食器文化をかじったところで、ファンタジーらしい食器はなにか?を考えてみよう。一口にファンタジーといっても、冒険者が外で使う食器、酒場で出てくる食器、晩餐会で出てくる食器は違うと考えるべきだろう。そのため、ここでのファンタジー食器の定義は「冒険者が日常で使っているもの」と設定したい。これは野営で使う食器や、ギルド・酒場で提供される食器、ということだ。ということで、まずは以下の食器をかんがえていこう。
- 金属のナイフ
- 木のスプーン
- 木のトレンチャー
- 陶器or木製のボール
- 鉄のフライパン
- 鉄の釜
酒場と野営の食器を同じにしたのは、「ナイフやスプーンは、自分のものを使うという文化」が、ファンタジーの世界でも必然ではないかと思ったからだ。
次の記事では、この食器達について、掘り下げていきたい。